ビリーバイオは、バイオハザードの顔であるヴォーカル/ギター担当のビリー・グラツィアデイのソロ・プロジェクト。2019年1月に、デビュー・アルバム『フィード・ザ・ファイア』を発表。
中身は80年代終わり~90年代のNYHCそのもの。バイオハザード全盛期に一切の引けを取らない、強烈な作品に仕上がっている。
バイオハザードは、ハードコア・パンクとヘヴィ・メタル、そしてヒップホップを融合し、90年代に一世を風靡したバンドだ。その結成は、87年にまで遡る。彼らの出身地であるニューヨークは、ハードコアとメタルの融合、いわゆるクロスオーバーと呼ばれるジャンルの本拠地。85年、当時すでにスーパースターであったアンスラックスのメンバー擁するS.O.D.が、デビュー・アルバム『Speak English or Die』をリリース。ハードコアとメタルの中間地点としか形容しようがないこの作品は、100万枚を売り上げる大ヒットとなった。アグノスティック・フロント、クロ・マグス、クラムサッカーズ、ルディクライスト。80年代中盤、ニューヨークからは数多くの名クロスオーバー・バンドが出現した。そんなシーンから登場したバイオハザードは、80年代に2本のデモを発表後、90年にバンド名を冠したデビュー・アルバムをリリース。そして名門ロードランナー・レコーズと契約して発表されたセカンド・アルバム、『Urban Discipline』は、メタル、ハードコアの垣根を超える大ヒットに。メタリックなハードコアという、90年代以降のNYHCの方向性を完成型にした歴史的作品である本作は、PVがMTVの常連となったこともあり、ミリオンセラーにまでなった。勢いに乗ったバンドは、メジャーのワーナー・ブラザースと契約。94年にはサイプレス・ヒルのセン・ドッグをフィーチャしたサード・アルバム『State of the World Address』をリリース。一躍時代の寵児となった。だが、その後はコンスタントにアルバムを発表していくものの、特に21世紀になってからのその活動は、不本意なものだったと言わざるをえない。05年の『Means to an End』を最後に、バンドは一旦解散。08年には初期の名作を作り上げた黄金ラインナップ4人で再結成。精力的にツアーを行い、12年には7年ぶりとなるアルバム『Reborn in Defiance』をリリースしたものの、発売前にベース/ヴォーカル担当のエヴァン・サインフェルドが脱退してしまう。
そんなバイオハザードに、歯がゆい思いをしていたファンも少なくないことだろう。だが、ビリーバイオのデビュー・アルバム、『フィード・ザ・ファイア』は、モヤモヤを一気に吹っ飛ばす会心の出来。ベースはスイサイダル・テンデンシーズのラ・ディアス。デス・バイ・ステレオ、ゼブラヘッドのダン・パーマーもギター・ソロで参加。レコーディングはビリーが所有するロスのファイアウォーター・スタジオで行われ、ミックスはメシュガ―やホーンテッドを手掛けたことで知られるテュー・マドセンが担当。「ルーツに忠実だが、モダンだ」という『フィード・ザ・ファイア』は、80年代後半~90年代のNYHCのサウンドを、現代のテクノロジーによる最高の音質でブラッシュアップしたものと言える。