アヴァンタジアはトビアス・サメットのソロ・プロジェクトであり、同時にオールスター・ヘヴィ・メタル・バンドでもある。エドガイのツアー中、バスの中で「マイケル・キスク、カイ・ハンセン、マーカス・グロスコフが、また一緒にプレイしてくれればいいのに。そうだ、それなら自分でその場を作ろう」と思い立ったというトビアス。その想いは、アヴァンタジアというプロジェクト、そして『The Metal Opera』(01年)、『The Metal Opera Pt. II』(02年)という2枚のアルバムという形で結実する。前述の3人に加え、元ストラトヴァリウスのティモ・トルキ、インペリテリのロブ・ロック、マグナムのボブ・カトレイらが参加という、それまでにない規模のオールスター・メンバーという豪華さ。そして、クラシックに根差した、まさに「メタル・オペラ」の名にふさわしい美しく壮大なスタイルで、アヴァンタジアは大きな話題となった。
もともとプロジェクト的な構想として始まったアヴァンタジア。あれだけの豪華メンバーを集めるのも容易なことではない。短命に終わったとしても、何ら不思議はなかった。ところが、『The Metal Opera Pt. II』から4年後の06年。トビアスは、アヴァンタジア復活を宣言。08年にはサード・アルバム『The Scarecrow』をリリース。本作にはアリス・クーパーやヨルン・ランデ、エリック・シンガーやルドルフ・シェンカーまでが参加。さらにこの年、彼らはヴァッケン・オープン・エアーのヘッドライナーを含む、初ツアーまで敢行。ここ日本にもやって来た。10年4月には、『The Scarecrow』と3部作を成す『The Wicked Symphony』、『Angel of Babylon』という2枚のアルバムを同時にリリースしている。
13年に発表された『The Mystery of Time (A Rock Epic)』では、プリティ・メイズのロニー・アトキンス、ジョー・リン・ターナーらの参加に加え、本物のオーケストラを起用。さらなる進化を見せた本作は、アメリカのビルボードでもチャートイン。続く16年の『Ghostlights』は、ヨーロッパ各国でアヴァンタジア史上チャート記録を更新。再びビルボードにもランクインし、その絶大な人気を確固たるものとした。
2019年2月には、アルバム『ムーングロウ』をリリース。マイケル・キスク、ヨルン・ランデ、元クイーンズライクのジェフ・テイト、エリック・マーティン、ロニー・アトキンスといったアヴァンタジア常連メンバーに加え、キャンディス・ナイト、ブラインド・ガーディアンのハンズィ・キアシュ、そしてクリエイターのミレ・ペトロッツァが初登場!ドイツのアーティストらしく、クラシックのハーモニーに強く根差しつつも、ケルト音楽やブルース、ゴスペル・ミュージックまでをも飲み込んだ一大音楽絵巻に仕上がっている。アートワークは、スウェーデンの著名な絵本作家、アレクサンダー・ヤンソンが手がけている。
そして、2022年10月には、9枚目となるアルバム『ア・パラノーマル・イヴニング・ウィズ・ザ・ムーンフラワー・ソサイエティ』をリリース。トビアスは「これまでに書いた中で最高の楽曲、これ以上ないエモーショナルなヴォーカル・パフォーマンス、最強のゲスト・パフォーマーたち。仕上がりを超誇りに思う」と大きな自信を覗かせる。ロニー・アトキンス(プリティ・メイズ)、マイケル・キスク(ハロウィン)、ジェフ・テイト(クイーンズライク)、ボブ・カトレイ(マグナム)といったお馴染みの面々に加え、ラルフ・シーパース(プライマル・フィア)、ナイトウィッシュのフローア・ヤンセンも参加と、実に豪華なメンバーがトビアスをバックアップ。ファンの期待を悠に超える大傑作に仕上がっている。