スティーヴン・ウィルソンほど天才という言葉が似合う人物はいないだろう。ミュージシャン、プロデューサー、そしてレコーディング・エンジニア。キーボード、ギター、ベースだけでなく、フルートやダルシマーまで演奏する。彼は一体いくつのバンド・プロジェクトをやっているのだろう。ポーキュパイン・ツリーにノー・マン。オーペスのミカエルとのプロジェクト、ストーム・コロージョン。イスラエルのミュージシャンとのコラボであるブラックフィールド。そしてその音楽性はロック、ポップスからエクストリーム・メタルやジャズ、実験音楽までをカバー。そのすべての作品がハイクオリティなのは当然。さらにポーキュパイン・ツリーのアルバムなどは、母国イギリスを始めとした各ヨーロッパ諸国、そしてアメリカでもチャートインするという成功もきちんと収めているのが凄いのだ。またレコーディング・エンジニア、プロデューサーとしては、キング・クリムゾンやジェスロ・タル、EL&P、イエス、ラッシュ、オノ・ヨーコといった、そうそうたるアーティストたちから厚い信頼を得ているというのだから、もはやその才能には嫉妬する気すら起きない。
そんなスティーヴン・ウィルソンだが、現在ミュージシャンとしてはソロ名義での活動をメインとしている。2003年から『Cover Version』と題したオリジナル曲+カバーの2曲を収録したシングル・シリーズのリリースを開始。08年にはソロとしてのデビュー・アルバム『Insurgentes』を発表。その後『Grace for Drowning』(11年)、『The Raven That Refused to Sing (And Other Stories)』(13年)、『Hand. Cannot. Erase.』(15年)、『To the Bone』(17年)とコンスタントにアルバムを発表。汲めど尽きせぬその創造性の高さ、深さには驚かされるばかりだ。
そして、2018年3月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴのドキュメント映像作品『ホーム・インヴェイジョン〜イン・コンサート・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール』が同年10月にリリースされた。