セクシーなデス・メタル。トリビュレーションのスタイルを説明するとしたら、そんな言葉がピッタリではないだろうか。15年、ブラック・メタル・バンド、Watainと来日も果たしている彼ら。同郷の後輩、トリビュレーションについてWatainは、「とても素晴らしいバンドだし、とても良い奴らなんだよ。だけど、その、何と言うか、とても女性っぽいところがあるんだ」と奥歯に物がはさまったような言いっぷりをしていた。「女性っぽいところがある」とはどういうことなのだろう?(トリビュレーションのメンバーは全員男性である。念のため。)
よくよく聞いてみると、ギタリストがステージで、胸の谷間メイクをしているというである!それはいくらなんでもありえないだろうと、ステージをよく確認してみると、驚いたことに彼は胸の真ん中に黒い影を描いていて、まるで胸の谷間があるかのように見せているではないか。デス・メタル・バンドがメイクをすることは、決して珍しいことではない。(ルーツのHellhammerのことを考えれば、むしろ正統的なことだ。)しかし、それが胸となると、また話は別。あまりに斬新すぎはしないか。
トリビュレーションの結成は04年にまでさかのぼる。05年に『The Ascending Dead』というデモを、翌06年には『Putrid Rebirth』というEPを発表した後、09年に『The Horror』でアルバム・デビュー。ゴシック・ロックをベースにしたデス・メタルという非常に興味深いスタイルで、大きな話題となった。13年にセカンド・アルバム『The Formulas of Death』を発表後、ヨーロッパの大手レーベル、Century Mediaと契約。15年にサード・アルバム『The Children of the Night』をリリース。この年に、前述の来日公演も行っている。ちなみにギターのAdam Zaarsは06年~11年の間、あのEnforcerでもギターを弾いていた。
18年に4枚目のアルバム『Down Below』をリリース。本作でもトリビュレーション節は健在。もしこのバッキングに、シスターズ・オブ・マーシー的なヴォーカルを乗せたら、そのままゴシック・ロックとして成立してしまうような、暗くも美しい世界観が展開されていく。2本のギターによる冷たいメロディ、ピアノやシンセ、ストリングスによる絶妙な味付け、そしてストーリー・テラーの役割を果たすデス・ヴォイス。ブラック・メタルのような雰囲気を感じさせるパートもあり、まるで古いヨーロッパのゴシック・ホラーを見ているような気分にさせてくれる。