2004年にドイツ南部のフランコニアで結成されたHämatomは、国内で高い人気を誇るヘヴィ・メタル・バンドである。メンバーはNord(北)、Sued(南)、West(西)、Ost(東)の4人。ヴォーカリストのNordは顔を白くペイントしており、他のメンバーは各々凝ったマスクを被って演奏している。
彼らが音楽スタイルを形成する上で大きな影響を受けているのは、ドイツ国内で起きた音楽ムーヴメントである“ノイエ・ドイチェ・ヘァテ (Neue Deutsche Härte/以下NDH)“である。
ドイツ産ロックミュージックの一種の概念であるNDHは、その音楽スタイルこそ様々あるのだが、歌詞がほぼドイツ語であることや、低音で巻き舌の“r”発音をあえて強調する歌唱などが特徴として挙げられる。NDHの先駆者、ウームフ!(OOMPH!)の1994年のアルバム『Sperm』で、当時のセパルトゥラ、プロング、パンテラといったバンドからの影響をダイレクトに受け、ドイツ流にインダストリアル・メタルを解釈した。この現象は、元々テクノ・ミュージックが盛んであったドイツでは自然な流れとして捉えられている。そして、1995年には日本でも有名なラムシュタイン(RAMMSTEIN)がデビュー・アルバム『Herzeleid』を発表。NDHはここから進化、発展していった。よってHämatomの音楽はエレクトロの要素が盛り込まれている。
バンド結成から一年後の2005年、HämatomはシングルやEP盤のリリースを重ねつつ、ドイツ国内でライヴを重ねていった。また、ナイトウィッシュやマノウォーなどのバンドが出演した『Earthshaker-Fest』、シックス・フィート・アンダーが出演した『Burning Fall Festival』で演奏し、徐々に人気を拡大していく。2006年2月には初のヘッドラインツアーを敢行。ドイツ国内の10都市で演奏した。2008年1月にフルレングス・アルバム『Wut』を発表。以降、コンスタントにリリースを重ねて、これまでに6枚のアルバムをリリースしている。視覚的要素の強い彼らのライヴは定評があり、ツアーを重ねていくごとにファンは増え続け、2011年には世界最大のメタルフェス『Wacken Open Air』に出演。同年リリースの3rdアルバム『Wenn man vom Teufel spricht』はチャート60位に入るヒットとなった。
2014年にはバンド結成10周年を迎え、アルバム『X』を発表。ドイツのチャート16位に入る好成績を記録した。続く2016年リリースの前作『Wir sind Gott』からのシングル「Fick das System」はチャート最高5位を記録し、数週間にわたってトップ100に入り続けた。また、このアルバムはオーストリアとスイスでもチャートインするなど、ヨーロッパ圏での人気も拡大している。2018年には、アルバム『Bestie der Freiheit』をリリース。遂に日本デビューを果たした。