ポルトガルは近来、デス/ブラック/シンフォニックなどのゴシック要素の強いダーク系ヘヴィ・メタルの良質なバンドを多数輩出している。とくにゴシック・メタルのムーンスペルは、ポルトガルのメタル・シーンを世界に知らしめると同時に、世界的にもトップクラスのバンドとなった。彼らはヨーロッパ全土で、ヘヴィ・メタルとゴシック系、どちらのシーンからも絶大な支持を得ている。
1989年にフェルナンド・リベイロを中心にブラック・メタル・バンドとして結成された彼らは1992年まで独自のスタイルの確立を目指し活動していた。1992年にムーンスペルと改名、デモ『Anno Satanae』をリリースする。1995年には地元リスボンでクレイドル・オブ・フィルスと共演。EP『Under the Moonspell』のリリースを経てCentury Mediaと契約を結び、アルバム『Wolfheart』でデビューする。以後、着実に人気を拡大し、彼らはこれまでに12枚のアルバムをリリースしている。2003年には6枚目のアルバム『The Antidote』がリリースされると、ポルトガルのアルバムチャートで4位を記録。これを機にSPV / Steamhammerとの3枚のアルバムの契約を結び、2006年のアルバム『Memorial』で遂に1位となった。
2017年にリリースされた、13作目となるアルバム『1755』は全曲ポルトガル語で壮大な物語が綴られ、1755年に起きたリスボン地震をテーマにしたコンセプト・アルバムだ。ダークな世界観のなかに耽美的メロディが彷徨い、さらに劇的に昇華されたゴシック・メタルが提示されている。