カムバック・キッドはカナダはマニトバ州ウィニペグ出身のハードコア・パンク・バンド。 バンド名は同国のプロアイスホッケー選手にして、NHL史上屈指の選手と評価されるマリオ・ルミューに関する新聞の見出しに由来する。その意味は“落ち込んでも再び立ち上がる人間“のこと。マリオは80年代半ばから90年代にかけて、度重なる負傷により何度も引退が噂されるも、再度復帰しては大活躍した伝説的ホッケー選手であった。
カナダのハードコア界ではちょっと知られた存在だったFigure Four(現在は活動停止中)のヴォーカリスト、アンドリュー・ニューフェルドがサイド・プロジェクトとしてスタートさせており、当初彼はこのバンドでギターをプレイしていた。そして6曲入りのデモをリリースすると世界各国の熱心なハードコア・ファンの間で話題となる。北米をくまなく回りながら評判を上げていった彼らは、2003年にFacedown Records からファースト・アルバム『Turn It Around』を発表。ふたたび長いツアーを行い、様々なフェスティバルにも出演していった。
Victory Recordsと契約し、DESCENDENTS、ALL、BLACK FLAGのビル・スティーヴンソンと、ジェイソン・リヴモアをプロデューサーに迎え、セカンド・アルバム『Wake the Dead』(2005年)を発表。この作品が各国で評価され、ハードコア・パンク・バンドとしての基盤をさらに固めることになる。彼らはこの後、ふたたび長いツアーを敢行。ツアー終了後、オリジナルのヴォーカリストScott Wadeがバンドを離れる。元々シンガーであったニューフェルドがバンドのヴォーカルを担当し、3rdアルバム『Broadcasting…』(2007年)をリリース。2008年にはCD+DVD作品『Through The Noise』を発表した。このDVDにはカムバック・キッドの6年間のドキュメンタリーが収録されている。そして2010年に『Symptoms + Cures』、2014年に『Die Knowing』と順調にアルバムをリリースし、その合間はずっとツアーを続けていた。東南アジアから南米、ヨーロッパ本土に至るまで、彼らは15年以上に渡り無数のライヴをこなし、「可能な限り多くの場所でプレイすることを常に誇りに思っている」とニューフェルドは語っているほど。日本での人気も知名度もきわめて高いバンドで、2005年の初来日からこれまでに5度の公演を行っている。
カムバック・キッドの音楽性は、モダンかつオールドスクールなハードコア。印象的なメロディ、ファストなパート、熱いシンガロング、ブレイクダウンからのモッシュ・パートを織り交ぜ、メタリックな要素も含んだ刺激的なサウンドが展開されている。どの曲にもシンガロングしたくなるパートがあり、歌メロにはフックがあり、リフもスピーディーである。
Victory Recordsを離れ、ニュークリアブラスト移籍第一弾、通算6作目となる『アウトサイダー』(2017年)は、「いつも我々がしていることを洗練し、新しいものを取り入れること」を念頭において制作に臨んだ作品。その言葉通り、これまでと大きく変わった点は無いが、すべてにおいてパワーアップしており、すべての楽曲がライヴ映えするキラーチューンとなっている。STRAPPING YOUNG LAD等で知られるデヴィン・タウンゼンドやFLATLINERSのCHRISなど、同国の有名アーティストがゲスト参加。ハードコアというジャンルに縛られない意識も持ち合わせているこのバンドは、今後さらなる飛躍が期待できるはずだ。