テクニカル・デスメタルとは、その名の通りひたすら複雑で難解なフレーズを多用するデスメタルのこと。これは高度なテクニックと体力がなければ成立しない。時に“変態的”とも形容されるほど、突き抜けて技術のレベルは高く、はじめて聴くインパクトは言葉を失うほどでもある。
そんなテクニカル・デスメタルのなかでもさらに突き抜けているのが、このArchspireである。彼らはカナダのバンクーバーで2007年に結成された。カナダには昔からテクニカル・デスメタルを演奏するバンドが多く、ケベックに世界的に有名なCryptopsy、重鎮GorgutsやAugury等々が活動しており、モントリオールにも2005年に結成されたBeyond Creationといったバンドがある。Archspireはそんなシーンの土壌の中から出てきたバンドであった。当初はDEFENESTRATEDというバンド名で、メンバーチェンジを繰り返しながら2009年頃にラインナップを完成させると、2010年にArchspireとして、4曲入り配信シングル「All Shall Align」をリリース。翌2011年、これに3曲を加えファースト・フルレングス・アルバム『All Shall Align』をTrendkill Recordingsより発表する。
ラインナップは“ショットガン・ヴォーカル”との異名を持つオリヴァー・レイ・アレロン(vo)、GremoryやArtep等々、カナダのメタル界で数多くのバンドでプレイしてきたスペンサー・プルウェット(ds)、ブラック・メタルバンド、Muspellheimで活動していたトビ・モレリ(g)、ディーン・ラム(g)、テクニカル・デス・メタルバンドのHarvest the Infection等に在籍していたジャレッド・スミス(b)。彼ら5人がこれでもかとテクニカルな演奏を繰り出し、ひたすら突っ走っていく。
2014年にはセカンド・フル・アルバム『The Lucid Collective』を米国と欧州で流通しているインディ・レーベル、Season Of Mistより発表。このアルバムのトータルタイムは35分足らずで8トラックであったにも関わらず、密度の濃い演奏は強烈なインパクトを放ち、その筋のマニアだけでなく広くメタル・ファンの間でも名前が知られるようになった。
2017年9月には3作目となるフルレングス・アルバム『Relentless Mutation』をリリース。これまでの作品同様、スタート&ストップのリフによる猛烈な波状攻撃、“ニール・パートmeetsフィア・ファクトリー“的とも評されているドラミング、ハイからロウへスイープなのかタッピングなのかわからないほどよく這いずり回るギターとベース、そしてリズムに乗せてグロウルを吐き出すヴォーカルが炸裂。これらすべてが渾然一体となり、Archspire独自のテクニカル・デスメタル、狂気の世界が形成されている。はたして何が彼らをここまで突き動かしているのか、それは彼らの音楽を聴いてみるしかない。超絶技巧集団という意味では、PeripheryやAnimals As Leadersといった、エクストリームなプログレッシヴ・メタルを好むリスナーにも、おそらく受け入れられるはずだ。