新世代のオルタナティヴ・へヴィ・ロック・バンド、ナッシング・モアは、2015月2月、日本武道館で行われたインターナショナル・フェス『VAMPARK FEST』で初来日し、強烈なパフォーマンスで聴衆にインパンクトを与え、日本のファンにもその名を浸透させた。
彼らは米国テキサス州サンアントニオで2003年頃に結成された。レベールもなく、マネージャーもいない中でライヴを重ねていき、2004年に自主制作でアルバム『SHELTER』を発表。以後、2年に1枚のペースで作品を発表し続ける。インディーズにて4枚のアルバムを発表、バンド活動が10年経った頃、アメリカの大手マネージメント/レコード会社であるEleven Seven Musicとアルバム5枚の長期契約を結んだ。ロック・ミュージックに独特のこだわりをみせるEleven Seven Musicには、モトリー・クルー、パパ・ローチ、イン・フレイムス、ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ等々が所属している。
2014年にアルバム『Nothing More』でメジャーデビュー。デビュー・シングルの「This Is The Time (Ballast)」 はビルボードのロックチャートで2位まで上昇した。世界中で“すべてが新人離れしている”と絶賛され、コーンやリンキン・パークのヘヴィネスにマーズ・ヴォルタの熱きエモーショナルなヴォーカル、インキュバスのような壮大さ、Karnivoolのプログレッシヴなアプローチ等々が融合していると言われていたが、何かに似ているようで似ていないのが彼らの音楽性である。
ジョニー・ホーキンス(vo)による歌詞の世界観は、哲学者や映画制作者、個人的な経験など、様々な事象から影響を受けている。個人的な経験の面では、前作に収録されていた「ジェニー」は、精神分裂病と闘うジョニーの叔母と双極性障害と闘う姉のジェナからインスピレーションを受けた曲だった。
彼の作る歌詞は極めて内省的であり、哲学的だ。歌詞に大きな影響を与えているのは、生誕100周年を迎えてなお多くの人々を刺激し続けるイギリスの哲学者、アラン・ワッツや、アメリカで最も人気のある精神世界分野の著者、エックハルト・トール。スイスの精神科医・心理学者カール・グスタフ・ユングの名が挙がる。映画監督ではスタンリー・キューブリック、テレンス・マリックなどが挙げられ、たいへん興味深い。「映画は僕たちの多くのソングライティングに影響を与えてきたが、もちろん物語を通じて、また特定の監督がどのように視覚媒体を通して感情を伝えているかによっても影響を受けている」とホーキンスは語っている。
また、音楽的影響は、1998年にカリフォルニア州アーバインで結成されたアメリカのポスト・ハードコア/エクスペリメンタル・ロックバンド、THRICEのヴォーカル&ギター担当、ダスティン・ケンズルーから多大な影響を受けたと口にしているように、エモーティブなハイトーンボイスを随所に挿入。そして、ジェント的プログレッシヴ、エレクトロニカ、モダン・オルタナティヴなど、様々な音楽要素を飲み込み、しっかりと消化した上で吐き出されているのが、彼らのロックである。
本作『ザ・ストーリーズ・ウィ・テル・アワセルヴス』でも、自分が何者であるのかを考え、探し続けている。そんな内容であるにも関わらず、非常に親しみやすいポップさを兼ね備えた、新しいロックを創造している。
【メンバー】
ジョニー・ホーキンス(ヴォーカル)
マーク・ヴァレルンガ(ギター)
ダニエル・オリヴァー(ベース)
ベン・アンダーソン(ドラムス)