ハード・ロック界の最強ヴォーカリスト、グラハム・ボネットは2017年3月にグラハム・ボネット・バンド&アルカトラスとして来日公演を行い、絶好調のヴォイス&シャウトを満員の会場に響き渡らせ、日本のオーディエンスを大いに驚かせた。そんな彼の新プロジェクトは、イタリアの人気ギタリストにしてテクニシャン、ダリオ・モロと組んだプロジェクト、EZOOだ。
ハード・ロック・ヴォーカリストとしてのグラハム・ボネットの伝説は1979年から始まった。レインボーのリッチー・ブラックモアに見出されバンドに加入、偉大なヴォーカリストであったロニー・ジェイムズ・ディオの穴を見事に埋め、大幅なセールスアップに貢献。彼がレインボーに在籍したのは1979年4月から約1年半だけであり、アルバム『ダウン・トゥ・アース』一枚のみの参加であったが、その貢献度はあまりにも大きいものだった。以後、グラハムは人気シンガーとなり、マイケル・シェンカー、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイ等と活動していくことで、数多くの名曲を生み出していく。
パートナーのダリオは1981年にヘヴィ・メタル・バンド、Crossbonesへの加入からミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた人物。地元でライヴを繰り返し、地道に国内をサーキットしていった結果、Crossbonesはイタリア国内である程度の成功を収めることになる。ダリオはバンド脱退後にイタリアのヴェンティミーリアに自身のレコーディング・スタジオ「Damage、Inc」を開設。ここでラクーナ・コイル、アナセマ、スカイクラッド、Aldo Giuntini Projectといったアーティストの作品でプロデューサー/エンジニアとして数多くの仕事をこなしている。
そしてダリオは1989年に元ブラック・サバスのトニー・マーティンと出会い、1999年に『The Cage』を発表。このプロジェクトでは『The Cage 2』(2002)と『The Third Cage』(2012)を3枚の作品をリリースしている。最近ではトニーのライヴ・バンド、ヘッドレス・クロスにも参加。さらに、その間には元ディープ・パープルのグレン・ヒューズと組んでヴードゥー・ヒルを2000年に始動させると、『ヴードゥー・ヒル』(2000)、『ワイルド・シード・オブ・マザー・アース』(2004)、『ウォーターフォール』(2015)と3枚の充実した作品を制作。グレン・ヒューズを再びハード・ロックの方向へと導き、多くのファンを喜ばせた。
そしてダリオは再び伝説のヴォーカリスト、グラハム・ボネットと組むことになった。二人の歴史は意外に古く、2001年の終わり頃にグラハム・ボネット&ドン・エイリーの英国ツアーにダリオが参加したことから始まる。そして2004年初め、ダリオとグラハムによるプロジェクト、Elektric Zooが結成され、4月にヨーロッパをツアーしている。この時のプロジェクトが、今回のEZOOとなって実を結んだということになる。
ダリオ・モロがハード・ロックを好むファンの唸るツボを熟知しているということは、これまでの仕事ぶりからもわかるはず。非常にバランスの良い音楽家で、今作でもその才能がいかんなく発揮されている。エモーショナルで、時折トリッキーなプレイが顔を出すテクニックはもちろん、コンポーザーとしても優秀であり、ヴォーカリストのポテンシャルを最大限に引き出すセンスを持っている。
そんな超強力なパートナーを得たグラハム・ボネット。2人の狙いはクラッシクなハード・ロック・サウンドの魅力を現代的な手法で蘇らせることである。