カラック・アングレンは03年に結成されたオランダのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド。08年に『Lammendam』でデビューし、映画音楽や近現代のクラシックから影響を受けたと思われるオーケストレーションが縦横無尽に飛び回るスタイルは、この時点ですでに完成の域に達しており、本作は大きな話題を呼ぶこととなった。12年にリリースされたサード・アルバム『Where the Corpses Sink Forever』は、ストリングスにピアノ、クワイヤが大活躍するシンフォニック・ブラック・メタルの傑作として大反響を呼んだ。翌13年には来日も果たしているので、そのステージに圧倒された方も少なくないだろう。17年6月には、5枚目のフル・レングスとなる『ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン』を発表している。
カラック・アングレンの音楽的ルーツはブラック・メタルにあるが、彼らは自らのスタイルを「ホラー・メタル」と称し、自分たちの活動をアルバム、あるいはライヴを通じた「ホラー・ストーリーテリング」であるとしている。音楽的に展開が複雑というより、ホラー映画的な場面転換を思わせるリズム・チェンジや雰囲気の急変が多用され、まさに「ホラー・メタル」「ホラー・ストーリーテリング」としか形容しようがない世界観が作り上げられている。扱われるテーマも、ファンタジー、ゴシック色が強い。バンド名はトールキンの指輪物語からとられているし、「死は幽霊船からやって来た」「死体たちが永遠に沈むところで」というアルバム・タイトルからも、彼らの持つファンタジー性を想像できるだろう。『ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン』では、そのストーリーテリングにさらなる磨きがかかる。