メリマックはフランス出身のブラック・メタル・バンド。結成は94年にまでさかのぼるベテランだ。メリマックとは、「地獄の底」を意味する古いケルト語。「売れ線を狙うことなく、またセルフ・パロディに陥ることなく、アンダーグラウンドに根差した美的テロリズム行為としてのブラック・メタルの炎を燃やし続ける」という明確な信念を持ち、「自分たちのやっている音楽はブラック・メタル以外の何物でもない」と言い切る生粋のブラック・メタル・バンドである。12年の『The Acausal Mass』発表時には、あのノルウェーのMayhemとヨーロッパ・ツアーを敢行。地元フランスのヘルフェスト、ドイツのパーティー・サン・オープン・エアーやサマー・ブリーズといった、超大型メタル・フェスに登場するほどの人気を獲得するに至った。
2017年には、5年ぶりとなる5枚目のアルバム『オメガフィリア』をリリース。もちろん「アンダーグラウンドに根差したブラック・メタルをプレイする」という彼らの信念に、一切のブレはない。
プリミティヴ・ブラック、シンフォニック・ブラックにポスト・ブラック。ブラック・メタルというジャンルも細分化の限りが尽くされ、○○ブラック・メタルという説明がつかないと、一体どのようなスタイルなのかわからないということも珍しくない。しかしメリマックに限っては、ブラック・メタル以外の言葉は一切必要がない。「オーソドックスな」ブラック・メタルという形容さえ、彼らにとっては余計なもの。ブラック・メタルがブラック・メタル以外の何ものでもなかった90年代前半。そんな時代のブラック・メタル・スピリットを今に継承しているのが、このメリマックなのである。