フレディ・マーキュリーがこの世を去ったのは1991年11月24日のこと。それから27年を経た2018年の同月に公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、クイーンというロック・バンドの稀有さ、フレディという比類なき人物像とその才能を改めて世に伝えるのみならず、音楽シーンの流れすらも変えることになった。いまやこの映画を入口としながら音楽人生を謳歌し始めている若者たちも少なくない。
フレディ・マーキュリー他界後、クイーンの存続はすべてのファンにとって「最大の願いであると同時に叶い得ぬこと」だった。が、ブライアン・メイとロジャー・テイラーは、まず2004年には彼ら自身よりも古い歴史を持つポール・ロジャースとの電撃合体により自身の伝説に新たな物語を書き加え、さらに近年ではアダム・ランバートという若き才能との融合により、彼ら自身も想像し得なかったはずの新たなステージに立っている。そしてアダムをフロントに据えた体制での日本初公演となる2014年のサマーソニックでのパフォーマンスは、会場を埋め尽くしたオーディエンスすべてに“感動”という言葉では言い尽くすことのできない何かをもたらす、まさに歴史的名演と呼ぶに相応しいものだった。
「プロセッション」を序曲に据えながら「ナウ・アイム・ヒア」で幕を開けたサマーソニックでのステージでは、「地獄へ道づれ」や「キラー・クイーン」、「Radio Ga Ga」、「ボヘミアン・ラプソディ」、「伝説のチャンピオン」といった代表的ヒット曲を網羅しながら、日本のファンにも馴染み深い「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」、デヴィッド・ボウイとの化学反応により生まれた「アンダー・プレッシャー」、さらには早期からこのバンドに声援を送り続けてきた日本のファンへの感謝の気持ちから日本語の歌詞が織り込まれた「手をとりあって」に至るまでのさまざまな楽曲が披露された。
クイーンは2016年9月下旬、日本武道館での三夜公演(しかもその最終夜はこのバンドにとって通算20回目の武道館公演となった)を大盛況のうちに終了させており、その感動の余韻が今もここ日本には色濃く残されている。その会場に居合わせた誰もが、語り継いでいくべき何かを感じたはずだが、同時に我々は、2014年の夏にも伝説的と呼ぶに相応しい一夜があったことを忘れてはならないだろう。あの年のサマーソニックで、そして2016年の武道館で「手をとりあって、このまま行こう」という言葉に心を重ねた人たち、そして、その瞬間に居合わせることが叶わなかった人たちすべてにとっても、永遠に語り継がれていくべき伝説の1ページとなった。