女性ヴォーカルのシンフォニック・メタル、あるいはゴシック・メタルのヨーロッパにおける人気は凄まじい。ライヴには何千人どころか何万人が集まることもあるし、アルバムがナショナル・チャートの上位にランクインすることもしばしば。そんなヨーロッパの中でもオランダは、ザ・ギャザリングやディレイン、アフター・フォーエヴァーにウィズイン・テンプテーションと、数多くの人気シフォニック/ゴシック・メタル・バンドを輩出し続けてきた。とりわけ2009年に解散してしまったアフター・フォーエヴァーは、現ナイトウィッシュのヴォーカリストであるフロア・ヤンセン、そしてこのエピカのリーダー、マーク・ヤンセンを輩出していることからも、非常に重要な存在と言える。
さてそのエピカだが、アフター・フォーエヴァーのオリジナル・メンバーであり、メイン・コンポーザーでもあったマーク・ヤンセンが02年にアフター・フォーエヴァーを脱退、サハラ・ダストというプロジェクトをスタートさせたことに端を発する。後にバンドの看板ヴォーカリストとなるシモーネ・シモンズを加入させると、翌03年にはバンド名を現在のエピカにチェンジすると共に、ファースト・アルバム『ザ・ファントム・アゴニー』をリリース。デビュー作にしてすでに映画音楽/クラシック的な華やかさとヘヴィネス、そしてプログレッシヴさをも融合した完成度の高さ、そしてシモーネの歌唱力及び美貌も相まって、あっという間に人気バンドとなった。04年のライヴ・アルバム『ウィー・ウィル・テイク・ユー・ウィズ・アス』を皮切りに、『コンサイン・トゥ・オビリヴィオン』(05年)、『アン・エピック・ジャーニー』(05年:サウンドトラック)、『ザ・ロード・トゥ・パラディソ』(06年)、『ザ・ディヴァイン・コンスピラシー』(07年)、『デザイン・ユア・ユニヴァース』(09年)、『レクイエム・フォー・ジ・インディフェレント』(12年)、『ザ・クォンタム・エニグマ』(14年)、『ザ・ホログラフィック・プリンシプル』(16年)と怒涛の、しかもハイ・クオリティのリリース・ラッシュで、その人気を不動のものとしていった。
2017年4月には、初のジャパン・ツアーを開催。東京公演がソールドアウトになるなど、鮮烈なインパクトを残している。
同年9月には6曲入りEP『ザ・ソレス・システム』をリリース、さらに12月には、超人気アニメ『進撃の巨人』の歴代オープニング主題歌をエピカがカヴァーした『EPICA VS attack on titan songs』をリリースし大きな話題となった。諫山創による原作コミックは2009年に連載開始、発行部数が累計6800万部を突破という空前のヒットを記録。小説やTVアニメ、映画などとのメディアミックスも行われ、ひとつの壮大なる『進撃の巨人』ワールドを構築している。
2019年12月には、エピカの人気を不動のものにした4枚目のアルバム『デザイン・ユア・ユニヴァース』(2009年)の10周年記念特別盤がリリース。当時、地元オランダではナショナルチャートのベスト10にランクインするなど、その後のエピカ大躍進のきっかけとなった作品だ。我々の思考が物質に影響を与える可能性という量子力学に基づいた難解なテーマを持つ作品だが、音楽の方は多くの人が楽しめる明快なもの。バンド名の通りエピックでシンフォニック。バンドの顔であるシモーネ・シモンズによる美しく澄んだ歌声と、マーク・ヤンセンによるデス・ヴォイス、そしてヘヴィなバッキングのコントラスト。他のシンフォニック・メタルとは一線を画すエスニックなアレンジメント。エピカをエピカたらしめている要素が完成を見たのが、この『デザイン・ユア・ユニヴァース』。今なお本作をエピカの最高傑作とする声も高い。
2021年2月には、4年ぶりのリリースとなる8枚目のフル・アルバム『オメガ』、同年12月には、ストリーミング・ライヴを収録した映像作品『オメガ・アライヴ』をリリース。
2022年11月には、豪華ゲストが多数参加した7曲入りのEP『ジ・アルケミー・プロジェクト』、12月には2006年のライヴ映像『ライヴ・アット・パラディソ』が16年の時を経て登場。セカンド・アルバムをリリースした翌年の映像であり、若き日のエピカをたっぷりと楽しむことができる。同時に、デビュー作『ザ・ファントム・アゴニー』、セカンド・アルバム『コンサイン・トゥ・オブリヴィオン』、サウンドトラックである『ザ・スコア:アン・エピック・ジャーニー』、そしてライヴ作品『ウィ・ウィル・テイク・ユー・ウィズ・アス』など、エピカの初期作品も再発。