フレディ・マーキュリーがこの世を去ったのは1991年11月24日のこと。それから27年を経た2018年の同月に公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、クイーンというロック・バンドの稀有さ、フレディという比類なき人物像とその才能を改めて世に伝えるのみならず、音楽シーンの流れすらも変えることになった。いまやこの映画を入口としながら音楽人生を謳歌し始めている若者たちも少なくない。
孤高の美学を持ったハード・ロック・バンドとしてデビューして1年。クイーンは破竹の勢いでツアーとレコーディングを行っていた。成功に向かって最もハングリーだったこの時期のクイーンは1974年、ロンドンのレインボー・シアターで3月31日と11月19日・20日の3回、ライヴを敢行し、初期クイーンの勇姿を彩る幻のライヴとなる。
3作目のアルバム『シアー・ハート・アタック』に伴うツアーの公演で、「キラー・クイーン」「ナウ・アイム・ヒア」など初期のヒット曲、そして「オウガ・バトル」「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」「神々の業」など、この時期しかライヴ演奏されなかったヘヴィなナンバーが披露される。約半年後、1975年4〜5月の初来日公演と似たセット・リストであるという点も、日本のファンにとっては重要なポイントだ。
若き日のフレディ・マーキュリーが放つ妖しいカリスマ性、ハード・ロッカーぶりを発揮するブライアン・メイのギターとロジャー・テイラーのドラムス、ファンクに傾倒する以前のソリッドなジョン・ディーコンのベースが一丸となって織りなすライヴ・パフォーマンスは、ブリティッシュ・ロックの異端にして完成形のひとつとして、現代に至るまで伝説となっている。
翌年、1975年にアルバム『オペラ座の夜』とシングル「ボヘミアン・ラプソディ」で不動の地位を築くことになるクイーンだが、その前夜のライヴは、爆発寸前の勢いを感じさせる。
フレディが亡くなって約30年、今もなおイギリスの国民的ロック・バンドとして愛され続けるクイーン。アダム・ランバートをヴォーカリストに迎えて日本初公演となった『サマーソニック2014』のヘッドライナーとしてのパフォーマンスは、会場を埋め尽くしたオーディエンスすべてに“感動”という言葉では言い尽くすことのできない何かをもたらす、まさに歴史的名演と呼ぶに相応しいものだった。
2016年9月下旬、日本武道館での三夜公演(しかもその最終夜はこのバンドにとって通算20回目の武道館公演となった)を大盛況のうちに終了させており、その感動の余韻が今もここ日本には色濃く残されている。