2003年にミルトン・キーンズで、ギタリストのアクル・カーニーを中心に結成。KoЯnやメシュガーなどに影響されたヘヴィなサウンドと卓越したテクニックに裏打ちされた複雑な曲構成を引っ提げてシーンに出現、2010年のデビューEP『Concealing Fate』が6部構成の大曲というプログレッシヴなアプローチで注目を集めた。
ファースト・アルバム『One』(2011)発表後、すぐに同作収録曲の別アレンジ・ヴァージョンを収録したEP『Perspective』を制作するなど、実験精神に富んだ音楽性はメタル/プログレッシヴ・ロックの両サイドから高評価を得てきた。2枚のアルバム『One』(2011)『Altered State』(2013)でシンガーが安定せず、何度かの交替を経てきた彼らだが、初代ヴォーカリストのダニエル・トンプキンスが復帰。2本の7弦ギターによる重低音ヘヴィネス、そしてダニエルのヴォーカルが生み出す抒情性、そして理知的でダイナミックなプロダクションは、孤高の世界観を生み出している。
メシュガーやペリフェリーなどに代表される“ジェント”ムーヴメントの新世代の旗手に挙げられることもある彼らだが、英国出身ならではの憂いをたたえたメロディ、変則リズムを用いたビート、エレクトロニクスも取り入れた先進性など、その音楽性は決してひとつのスタイルに囚われない。なおテッセラクトは正八方体と呼ばれる四次元超立方体を指す。元々は数学的知識を求められる概念だったが、映画『アベンジャーズ』で重要な位置を占めるなど、一般にも知られるようになってきた。
それと同様に、これまでカルト的な支持を得てきた彼らだが、前作に伴うツアーでは本国イギリスやヨーロッパのみならずアメリカ、そしてオーストラリアもサーキット。2014年の英国『ソニスフィア』フェスティバルでのメイン・ステージ出演などを経て、2015年“北極星”を意味するタイトルのサード・アルバム『ポラリス』をリリース。ダニエルの復帰作となる作品は、バンド全体のさらなる成長、広がりをみせた充実作となった。2018年には現代プログレの名門、Kscopeレーベル移籍第2作目のアルバム『ゾンダー』をリリース。テッセラクトが、いよいよDjentの向こう側に辿り着いたかのような印象すら受ける作品だ。
2000年代初期にスウェーデンのエクストリーム・メタル・バンド、Meshuggahのギタリスト、Fredrik Thordendalによる造語として発生し、プログレッシヴ・メタルから派生したヘヴィ・メタルのジャンルのひとつとして認知されたDjentであるが、そのジャンルの中でも年月を経て、様々なバンドがそれぞれの進化を遂げてきた。テッセラクトは、先人達が切り拓いてきた音楽をすべて飲み込み、独自の解釈でアウトプットしている。7弦ギターを駆使し変拍子を織り交ぜた複雑なリズムによって生み出される独特のグルーヴ、鉄壁のアンサンブルから繰り広げられるエクスペリメンタルな音空間、そして作品全体を包み込む英国特有の湿り気を帯びた空気感などが、彼らのオリジナリティであり、魅力となっている。