エントゥームドはスウェーデンの首都ストックホルム出身のデス・メタル・バンド。同郷のディスメンバーやカーネイジらと共に80年代後半から90年代前半にかけてのデス・メタルのムーヴメントの中心的役割を担った最重要バンドの1つだ。
バンドの結成は1987年。ナイヒリスト(NIHILIST)として活動を開始したが、デモ・テープをレコーディングした後、エントゥームドに改名、そして1990年に英国のレーベル“イアーエイク”と契約してファースト・アルバム『レフト・ハンド・パス』をリリースした。翌1991年にはデス・メタルの傑作との誉れの高いセカンド・アルバム『クランデスタイン』を発表、世界中のメタル・マニアを大いに魅了した。サード・アルバム『ウルヴァリン・ブルーズ』以降はバンドにとってのルーツとして息づくパンク/ガレージ・ロックの要素も前面に打ち出すようになり音楽面での多様化を印象づけた。1997年リリースの4作目『DCLXVI:トゥ・ライド・シュート・ストレイト・スピーク・ザ・トゥルース』を最後に、バンドの結成メンバーの1人であるドラマーのニッケ・アンダーソン(へラコプターズ〜現インペリアル・ステイト・エレクトリック)が脱退、それ以降は音楽的な面で様々な変遷を経ていくことになった。
2013年、L.G.ペトロフ(ヴォーカル)、アレックス・ヘリッド(ギター)、ニコ・エルグストランド(ギター)、ヴィクター・ブラント(ベース)、オーレ・ダールステット(ドラムス)という編成による通算10枚目の新作『バック・トゥ・フロント』がリリースされることがアナウンスされたが、ほどなくして新たに契約した“センチュリー・メディア”が「予測不可能な技術的問題」を理由として翌2014年に発売を延期することを公表した。
しかし2014年、オリジナル・ギタリストでバンドのメイン・ソングライターでもあるアレックス・へリッドがバンドから突然離脱、L.G.ペトロフ(ヴォーカル)、ニコ・エルグストランド(ギター)、ヴィクター・ブラント(ベース)、オッレ・ダールステット(ドラムス)の4人は約1年に亘って表立った活動を行なうことが出来なくなってしまう。法的問題が生じることも考えられるため、L.G.以下の4人はエントゥームドではなく、新たにエントゥームド A.D.という名義で活動を続けることを決断、アルバム制作に向けて曲作りを随時進めていくことになった。そうした一連の経緯から、エントゥームドの新作発表延期の理由は「技術的な問題」ではなく「法的問題」だったことが明らかとなった。ともあれ、エントゥームド A.D.の4人はアルバム制作を続行、2014年8月にこの名義としては初のアルバムとなる『バック・トゥ・ザ・フロント』をリリースした。
エントゥームドとしても、90年代以降に追究したデス&ロール路線やオルタナティヴ・ロック寄りのサウンドから一旦離れ、「SERPENT SAINTS」(2007年)ではバンドの原点に戻った作風を提示してみせたが、L.G.達は新たにスタートさせたエントゥームド A.D.においても80年代後期のデス・メタル・スタイルに確信的に復帰、ファースト・アルバム『バック・トゥ・ザ・フロント』において彼らの創作面の堅調ぶりを大いにアピールした。そしてエントゥームド A.D.にとっての2枚目のフル・アルバム『デッド・ドーン』においても前作の作風を継承しつつも、よりヘヴィでダークでアグレッシヴな曲調を追究、彼らのクリエイティヴィティの充実振りをまた強く印象づける仕上がりとなっている。