グランド・メイガスは1996年、後にスピリチュアル・ベガーズへと加入することとなるヤンネ“JB”クリストファーズソン(vo, g)を中心にマッツ“フォックス”スキナー(b)、フレデリック“トリッセ”リーフヴェンダール(dr)というラインナップでストックホルムにて結成。数作のデモを経て、2001年にはゴートスネイク/サンO)))のグレッグ・アンダーソンが主宰するサザン・ロード・レコーズよりスピリチュアル・ベガーズとのスプリット・シングルをリリースしている。すでにエレクトリック・ウィザード、カテドラルといったUK勢やジ・オブセスド、インタナール・ヴォイドなどのUSレジェンド、日本のBoris、チャーチ・オブ・ミザリーをリリースして個性を確立し、勢いに乗っていた同レーベルからのリリースで、グランド・メイガスは一躍その名を世界に知られることとなった。
当初のグランド・メイガスが志向したサウンドは、ブルーズ・ハードの流れを汲むドゥーミーなハードロック……つまりはブラック・サバスにストーニッシュなサザンロック・テイストを注入し、ヘヴィかつビッグなリフワークでプレイするというもの。JBのソウルフルかつ伸びやかな歌唱力、ニヒリスト?エントゥームドやグレイヴ、アンリーシュトなどを生んだストックホルム・スタイル・デスメタルのお膝元という土地柄を感じさせるブルータルなサウンドメイキングは、いずれも良い方向へと作用し、群雄割拠を極めたドゥーム/ストーナー界隈における北欧の枢軸となるのに時間はかからなかった。その後彼らは同じくライズ・アバヴより2枚のフル・アルバム『モニュメント』(2003)、『ウルフズ・リターン』(2005)をリリースしている。2002年にJBがスピリチュアル・ベガーズへと加入、スパイスの後釜という大役を想像を上回る形でこなし、旧来のファンから大いに歓迎されたという事実も、グランド・メイガスの成功を後押ししたことだろう。
転機の訪れは、彼らにとって初めてのメンバー・チェンジによってもたらされた。『ウルフズ・リターン』のリリース翌年、長年共にプレイしたトリッセが脱退し、新たに様々なバンドを渡り歩いた職人ドラマー、セバスティアン“セブ”シポーラが加入。これを機にグランド・メイガスは、『モニュメント』から『ウルフズ・リターン』にかけて徐々に見せ始めていたトラディショナルなヘヴィメタルへの憧憬を開放する。2008年に再びライズ・アバヴよりリリースされた4thアルバム『アイアン・ウィル』で具現化したその方向性は、初期の泥臭いブルーズロックのテイストを叩き台にドゥームロックにおける初期トラブルやロニー・ジェイムス・ディオ在籍時ブラック・サバスの側面を拡張し、ジューダス・プリーストやマノウォー、マーシフル・フェイトにまで通じる“ヘヴィメタル”としか形容できないものへと進化を遂げた音楽性となっていた。ここで前述の歌唱力が最大限に活かされたことはもちろん、ダイナミックなヘヴィネスは単なるレイドバックとは異なる現行のヘヴィメタル・バンドとしての存在感を提示することに一役買い、持ち前のメランコリックなメロディもヘヴィメタルらしさを際立たせる重要な役割を果たした。オールドスクールでありながら新鮮なヘヴィメタルの在り方を、ハイ・オン・ファイア『ブレスド・ブラック・ウイングス』とは一味異なる経緯とスタイルで確立したのだ。
水を得た魚の如くヘヴィメタル道を邁進し始めたこともあってかJBは2010年にスピリチュアル・ベガーズを脱退、グランド・メイガス専属となり、同年には老舗ロードランナー・レコーズより『ハマー・オブ・ザ・ノース』をリリースしている。同作のリリース後には再びメンバー・チェンジを行い、スピリチュアル・ベガーズの盟友ルートヴィヒ・ウィットが新ドラマーとして加入。名門ニュークリア・ブラスト・レコーズとの契約を果たした彼らはその後、ヘヴィメタルならではの一貫した美学に裏打ちされた『ザ・ハント』(2012)、『トライアンフ・アンド・パワー』(2014)、『ソード・ソングス』(2016)と、ハイクオリティなヘヴィメタル作品を同レーベルよりリリースしている。