2020年の6月で76歳を迎えたジェフ・ベックは、ロック・ヒストリーにおける最重要ギタリストのひとりだ。1965年にエリック・クラプトンの後任としてヤードバーズに加入して高い評価を得た彼は、その後、第1期ジェフ・ベック・グループを結成してヘヴィーなブルース・ロックを展開し、ブリティッシュ・ハード・ロックの礎を形作った。第2期ジェフ・ベック・グループでは、ファンク、サザン・ソウルへ接近して音楽性の幅を広げ、ベック・ボガート&アピスで更なるハードネスとファンクネスを具現化した後、ギターの魅力を前面に押し出したジャズ・ロックへと方向転換。『ブロウ・バイ・ブロウ』(1975年)、『ワイアード』(1976年)という2大傑作を生み出した。以来、時にはダンス・ミュージック、時にはテクノ、時にはクラシックなど多様な音楽性に接近し、取り入れながら、職人技的であり、かつ高い芸術性を誇る、唯一無二、前人未到のプレイを聴かせ続けている。
ベックの神業的なプレイは、その新たな音世界の中にあっても、燦然と輝いており、指板の上を縦横無尽に行き来する左手、弦をヒットしつつ、繊細かつ豪快にアームを操る右手、それらが繰り出す玉手箱のようなトリッキーさと、ルーツを大事にしたオーセンティックさが魅力だ。