フィア・ファクトリーは1989年にロサンゼルスで結成された。デス・メタル/グラインドコアとインダストリアル・ミュージックを融合させた独自の音楽でメタル・シーンにおいて確たる地位を築いた存在だ。彼らは1992年に『SOUL OF A NEW MACHINE』でデビュー。粉砕機のようなベース・ドラムと鋭角的に切り刻まれるギター・リフを同期させ、インダストリアル・ノイズをちりばめた画期的なサウンドには注目が集まった。1995年にはセカンド・アルバム『DEMANUFACTURE』をリリース。ここでは自らをnew breed=新しい種と称する、そのままズバリ“New Breed”という曲を収録。彼らが当初より標榜していた“機械対人間”というコンセプトを強調して近未来の風景を聴き手に想起させる作風を提示した。冷酷で無慈悲な金属音と、咆哮とメロディアスなヴォーカルの両方を自在に操るバートン・C・ベルによる歌唱とのコントラストはまさに彼らの目論む“機械対人間”の構図を表わすものだった。1998年には「人間という種がobsolete(時代遅れ)になった」という主旨のストーリー・アルバム『OBSOLETE』を発表、SF映画のシーンを聴き手に思い描かせるような視覚的にも訴える作風となっており、このアルバムも高く評価された。2001年、4thアルバム『DIGIMORTAL』を発表するが、同作に伴うツアー後、盤石に思われたフィア・ファクトリーは分裂という局面を迎えた。個人レヴェルでの衝突により、フィア・ファクトリーサウンドの中核を担っていたバートン・C・ベルが脱退してしまったのだ。そして2002年春、フィア・ファクトリーはバンドの解散を公表した。
2004年、クリスチャン・オールド・ウォルバース(bass)とレイモンド・ヘレーラ(drums)の打診を受け、バートンはフィア・ファクトリーの再結成に同意した。クリスチャン・オールド・ウォルバースがギタリストに転向、ストラッピング・ヤング・ラッド等での活動で知られるバイロン・ストラウド(bass)をラインナップに加えて新たな章に入り、5th『ARCHETYPE』(2004年)、6th『TRANSGRESSION』(2005年/クリスチャンがギターとベースを兼任)といったアルバムを制作したが、シーンにおける存在感はやがて薄れ始め、また今度はクリスチャンとレイモンド・ヘレーラ(drums)が別バンドアーキアを始めてフィア・ファクトリーから離脱。フィア・ファクトリーはまたもや窮地に立たされてしまった。
そこでバートンは、8年間にわたって音信不通だったディーノに連絡を取り、過去の確執を清算して再び音楽を共に創造していくことを決意、またダーク・エンジェルやデス、ストラッピング・ヤング・ラッド等で辣腕をふるってきたジーン・ホグラン(drums)を新たに陣営に迎えて2009年に7枚目のアルバム(2002年リリースされた初期作品『CONCRETE』を含めると8作目)『MECHANIZE』を発表したのだった。2012年にはドラム・プログラミングを使っての『THE INDUSTRIALIST』を発表(ジーン・ホグランはアルバムへの不参加を不満に感じて脱退)、バンド初期のインダストリアル・サウンドを改めて強調し、再び“機械対人間”というテーマに焦点を当てた仕上がりは高く評価された。
そして2015年には、10作目のアルバム『GENEXUS』をリリース。前作『THE INDUSTRIALIST』のツアーで加わったマイク・へラー(drums/MALIGNANCY、SYSTEM DEVIDE他)を擁する編成で制作する初めてのアルバムである。『THE INDUSTRIALIST』の延長線上にある強力な仕上がりは既に世界中のプレスから絶賛の声が寄せられている。なお、プロデューサーを務めたのは、初期フィア・ファクトリーサウンドにとってのキー・パーソンの1人であり、『MECHANIZE』より再び彼らと手を組むようになったリース・フルーバーだ。なお、アルバム完成後に正式ベーシストとしてスタティック-Xやソウルフライ等で活動してきたトニー・カンポスが加入、バートン、ディーノ、トニー、マイクという4人編成となった。
2020年9月ヴォーカルのバートン・C・ベルの脱退が発表された。
2023年6月には、7thアルバム『Mechanize』(10年)、8thアルバム『The Industrialist』(12年)を『Re-Industrialized』と改題し再発。