TOTOのデヴィッド・ペイチとスティーヴ・ポーカロのプロデュースでデビューしたロジックを経て、イエスに多大な影響を受けたグループ、ワールド・トレードに参加したのを機にクリス・スクワイアとの交流が始まったビリー・シャーウッド。
イエスのアルバム『トーク』のためのワールド・ツアーにサポート・メンバーとして参加以降、トレヴァー・ラビンに代わるバンドの刺激剤として八面六臂の活躍をしてきた。イエス以外でもクリス・スクワイアとは、90年代の再編ワールド・トレードや、二人の双頭ユニットのコンスピラシーで共演するなどずっと親密な関係を続けてきた。スクワイアが2015年6月27日に病気で亡くなったことから、そんな両者の最後の共演となったのが、シャーウッドの2015年スタジオ作である。
同年の北米ツアーで亡きスクワイアのベース・パートを担う大役を任されたシャーウッドは、ここでは作詞作曲、プロデュースに加え、ヴォーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムスを担当しているが、タイトル曲のベースは生前のスクワイアが弾いている。それだけでもイエスとスクワイアのファンにとっては感動、感涙ものだ。そして長年に渡り活動してきたプログレシーンのネットワークを活かし、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマン、パトリック・モラーツ、ジェフ・ダウンズ、コリン・モールディング、ジェリー・グッドマン、ジョン・デイヴィソン(イエス)、スティーヴ・モーズ(ディープ・パープル)等を迎えてのシンフォニックなプログレッシヴ・サウンドは、王道のメロディと緻密な実験主義に彩られた高い完成度を誇っている。