イアン・ペイス(ディープ・パープル)の奥方ジャッキーが運営するガン治療と研究への基金団体『サンフラワー・ジャム』は2006年以来、チャリティ・ライヴを開催してきた。当初は少人数を前にした規模の小さなイベントだったが、2011年に5千人収容のロイヤル・アルバート・ホールに初進出。大会場に相応しいアーティストが集結したのが、2012年の『サンフラワー・スーパージャム』だ。
この日、出演したのはイアン・ペイス(ディープ・パープル)、ブライアン・メイ(クイーン)、ジョン・ポール・ジョーンズ(元レッド・ツェッペリン)、ブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)、ウリ・ジョン・ロート(元スコーピオンズ)、アリス・クーパー、ブライアン・オーガー、マーク・キング(レヴェル42)、ザ・テンペランス・ムーヴメントという、いずれもロック界の第一線で活動するアーティスト達だ。彼らがロック史に残る名曲の数々をプレイするライヴは、まさに“スーパージャム”と呼ぶに相応しい。
ウリ・ジョン・ロートは愛器“スカイ・ギター”を駆って、スコーピオンズ時代の「カロンの渡し守」、そしてロックとクラシックを股にかけ活動するアルフィー・ボウとレッド・ツェッペリンの「ロックン・ロール」をプレイする。ブルース・ディッキンソンがヴォーカルをとるシン・リジィの「エメラルド」では、ウリとミッキー・ムーディー(元ホワイトスネイク)によるツイン・リード・ギターも実現する。ブルースはさらにザ・フーの「ビハインド・ブルー・アイズ」を歌った後、ブライアン・メイ、ジョン・ポール・ジョーンズ、イアン・ペイス、ブライアン・オーガーを迎え入れてディープ・パープルの「ブラック・ナイト」を熱唱する。続いて同じ顔ぶれで演奏されるのは、レインボーのヒット曲であり、ブライアン・メイのソロ・ツアーでプレイされたこともある「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」だ。アリス・クーパーはウリとブライアンを従えて、「アリスは大統領」「スクールズ・アウト」という2大ヒット曲を歌う。
実はこのコンサートの2ヶ月前の2012年7月16日、ディープ・パープルのキーボード奏者だったジョン・ロードがガンで亡くなっている。彼に捧げるトリビュート・コンサートは同じロイヤル・アルバート・ホールで2014年4月4日に行われ、『ジョン・ロードに捧ぐ〜セレブレイティング・ジョン・ロード』として作品リリースされているが、2012年のコンサートではジョンのソロ・キャリアで行動を共にしたシンガー、スティーヴ・バルサモが、ジョンの「ピクチャード・ウィズイン」を彼に捧げている。そして出演者が勢揃いし、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」で締めくくるショーは、まさに歴史的モニュメントである。