90年に登場したDeicideのデビュー・アルバムは、衝撃の一言だった。Morbid Angel、Obituary、Cannibal Corpseといったバンドが続々とデビューし、デス・メタルというまったく新しいジャンルが大きな潮流となっていた当時、徹底してサタニックなイメージを保持していたDeicideは、一際異質な存在だった。ベース・ヴォーカル担当のリーダー、グレン・ベントンは、自らの額に逆十字を焼印。「キリストが死んだ年である33歳になったら自分も死ぬ」と公言。56歳となった現在も元気にバンド活動をしている彼であるが、当時は「彼ならば本当に命を絶つのでは?」と思わせるほど、強烈に邪悪なオーラを放っていたのだ。92年のセカンド・アルバム『Legion』は、わずか29分の大傑作。「デス・メタル版『Reign in Blood』」として、リリースから30年以上過ぎた今も世界中のマニアに崇められる歴史的名盤である。その後もわりとコンスタントにアルバムをリリースしてきたDeicideであるが、18年の『Overtures of Blasphemy』を最後に6年の沈黙を守ってきた。
2024年、ついに待望のニュー・アルバム『Banished by Sin』をリリース。本作では、MassacreやInhuman Condition等、数々のデス・メタル・バンドで活躍してきたギタリスト、テイラー・ノードバーグが新加入。DeicideはいつでもDeicide。とは言え、今回のアルバムについてグレンは「90年代のスタイルへと回帰した」と明言しているのだから、ファンとしてはたまらない。ひたすら邪悪でブルータル。しかし、リフやメロディには明確なフックがあり、親しみやすくもある。これぞDeicideの真骨頂。Deicideマニアとしては、6年も待たされた甲斐があったというもの。まさに悪魔の王の帰還である。