パワー・メタル好きで、トニー・カッコの名を知らぬものはいないだろう。言うまでもなく、フィンランドを代表するメタル・バンド、Sonata Arcticaのフロントマンである。そんなトニーが新たに始めたバンドが、このHimmelkraftである。そのデビュー・アルバムのコンセプトは、架空のキャラクターによる、架空のバンドが演奏する、架空の神話に基づいたアルバム。と言うことで、神秘性を守るため、本作に参加しているメンバーは、トニー以外一切明らかにされていない。と言うか、もともとはトニーは自身の参加も秘密にしたいという意向だったようだが、マネジメントの「それじゃアルバムをプロモーションしようがない」という説得に、自分の関与だけは明かすことに同意した模様。
サウンドの方は、ヘヴィな楽曲にシンセサイザーをふんだんに取り込んだ、そのコンセプト通りの非常にシンフォニック、ファンタジックで壮大なもの。トニーの歌唱力については、改めて触れるまでもないだろう。非常に緻密に作り込まれた世界観を伝えるストーリーテラーの役割を、見事に果たしている。Sonata Arcticaとはまた一味違った魅力にあふれるスケールの大きな一枚。