商品説明 DETAIL セイント・ヴァイタスはドゥーム・メタル界において、生きながらにして神として崇められていると言っても過言ではないバンドだ。その結成は、今から40年前の79年にまでさかのぼる。彼らは決して陽の当たる道ばかりを歩んできたわけではない。84年にバンド名を冠したアルバムでデビュー。翌85年にセカンド・アルバム『Hallow's Victim』、『The Walking Dead』EPをリリースしたのち、スコット・”ワイノ”・ワインリック(Vo)が加入。86年に発表された『Born too Late』は、今でこそドゥーム・メタルの金字塔とされる作品であるが、当時、リアルタイムでこの作品を評価していた人間がどれほどいただろう。86年と言えば、スレイヤーが『Reign in Blood』をリリースした年。言い換えれば、ヘヴィメタルはスピード競争の真只中にいたということ。ブラック・サバスやブルー・チア―といったバンドからの影響色濃い、ヘヴィさ、さらには遅さすらを売りにするセイント・ヴァイタスには、光など当たりようがなかった。セイント・ヴァイタスは時代遅れの極致だったのだ。そして、それを本人たちも自覚し、むしろ誇りに思っていたことは、『Born Too Late』=「生まれるのが遅すぎた」というタイトルからも伺える。 潮目が変わったのが、時代が90年代に突入したころのこと。当時世界最高速と目されていたナパーム・デスを脱退したリー・ドリアンが、カテドラルという世界最遅バンドを始めたことで、エクストリーム・メタル・ファンの目は、突如ヘヴィさ、さらに「遅さ」にまで向けられることになったのだ。そのリーがコンパイルしたオムニバス、『Dark Passages』(91年)に参加したことで、セイント・ヴァイタスの名は、一気にヘヴィメタル・ファンの間にも広まる。そして、ドゥーム・メタル・ブームの中、ペンタグラムらとともに、その元祖として神格化されていったのである。ところが、せっかくの追い風を尻目に、91年ワイノはセイント・ヴァイタスを脱退。かつての自身のバンド、ジ・オブセストの再結成へと動く。(ジ・オブセストはメジャー契約を手にするので、ワイノの決断は正しかったと言えるが。)セイント・ヴァイタスはスウェーデンのドゥーム・メタル・バンド、カウント・レイヴンのヴォーカリスト、クリスチャン・リンダーソンを後釜に迎え入れるも、『C.O.D.』(92年)の1枚で脱退。続く95年の『Die Healing』は、初代ヴォーカリスト、スコット・リーガーズを迎えて製作された。これら2枚の作品はともに高品質であったものの、結局96年にバンドは解散してしまう。 7年のブランクを経た03年、『Born Too Late』期のラインナップでセイント・ヴァイタスが再結成というサプライズが起こる。ライヴやツアーが行われたが、残念ながら、ほどなくしてドラムのアルマンド・アコスタが健康上の理由で脱退、10年に亡くなってしまった。一方、バンド内では新たなアルバムを作ろうという機運も高まってくる。それが現実となったのが12年。実に17年ぶり、ワイノがヴォーカルの作品としては22年ぶりとなるニュー・アルバム、『Lillie: F-65』がリリースされたのである。ところが、歴史は繰り返す。ワイノが再び脱退。しかも理由はまたしてもジ・オブセスト再結成!で、セイント・ヴァイタスは、またまた初代ヴォーカリスト、スコット・リーガーズを呼び戻したのだ。 そしてこの度リリースになるのが、その名もズバリ『セイント・ヴァイタス』。そう、84年のデビュー・アルバムの同名の新作だ。初代ヴォーカリストの復帰、そして再びバンド名を冠したアルバムは、初心への回帰を強く感じさせる。その内容はというと、もうどこを切ってもセイント・ヴァイタス。ギターのワンストロークで、すぐにセイント・ヴァイタスとわかるもの。決して誇張で言っているのではない。アルバムを再生し、最初の音が鳴った瞬間に、思わず笑みがこぼれてしまう。それほどセイント・ヴァイタス丸出しなのだ。それはそうだろう。バンド結成当時から、トレンドとは無縁、時代遅れであることを誇りにしてきたバンドだ。時代が一周し、図らずもトレンドの波に乗るようなこともあったかもしれない。しかし、そんなときでもセイント・ヴァイタスはセイント・ヴァイタスであり続けた。遅くてヘヴィでシンプル。時代遅れ上等。その姿勢は2019年になった今でも変わらない。ドゥームの神には、時の流れなど存在しないのだ。 【メンバー】 スコット・リーガーズ (ヴォーカル) デイヴ・チャンドラー (ギター) パット・ブルダース (ベース) ヘンリー・バスケス (ドラムス)